山田あかねさん、
面識はありませんが、
ツイッターでは交流があります。
http://twitter.com/aka720
山田さんの文學界新人賞入選作
「終わりのいろいろなかたち」
(「佳作」的な賞「奥泉光・山田詠美奨励賞」)は、
本になってないけど雑誌「文學界」で読み、
面白かったということだけ印象に残ってる。
おぼろげな記憶によれば、
「かつて田舎の野球部でエースだったせいで、
東京だと全然いけてないのに自分はモテると自信満々な男に、
強引に誘われて断われずにつきあってしまう女子」
の視点で書かれた小説なんだけど、
設定だけで面白そうでしょ?
本になればいいのに!
「文學界」は以前、
掲載作をなかなか本にしない雑誌だった。
で、
その「本になってない小説の話」は、
いったん忘れてください。
それとはまったく別の小説
『すべては海になる』を、
著者自らが映画化したというので、観てみました。
(もともとテレビの仕事をしている方です)
山田あかね監督『すべては海になる』公式サイト
http://sea.jp.msn.com
*
三軒茶屋の「中央」という名の古ーい、
味のある映画館。
もぎりの人が親切でした。
主演ふたりが、
有名な女優と男優であることに私は、
途中で気づいたほど人の顔を覚えない。
ヒロインの佐藤江梨子さん、
短歌のテレビで共演したこともあるのに。
(よく知らずに、
彼女の短歌作品を淡々と批判してしまった私)
あと『誰も知らない』主演の柳楽優弥が、
いけてない高校生を演じてたけど、
太ってて、ほんとに全然いけてなかった。
うーん。
あれなら高校時代の僕と似たようなもの、
と(錯覚でも)思えるくらいだった。
ナイス、キャスティング!
……いま彼らの演技について感想を書いてみて、
「役者・枡野浩一の演技」を見たことある人の、
つっこみの嵐を感じ、数行消しました。
いえ、好感度の高い演技だったと思うんだけど。
何度か出てくる、
「え……」
というセリフの言い方が気になった。二人とも。
ともあれ、
描こうとしていることに、
とても共感しました。
通りのいい話にはしないように、
注意深くつくられている。
作中に出てくる小説『小島小鳥の冒険』も
山田あかね作の単行本として、
読んでみたくなった。
映画原作『すべては海になる』は昔、
単行本が出た段階で読んでるんだけど、
「ああ、こういう話だった」
と思いだしつつ観た。
映像の撮り方は、
散文的という感じ。
このあいだ観た韓国映画『息もできない』は、
あらすじは(振り返って思うと)陳腐な気がするのに
緊張感があって夢中で観てしまう、
という映画だった。
『すべてが海になる』は、
あらすじや主張にまず好感を持ち、
散文的な映像に
のんびりつきあう、
みたいな映画だった。
以下、
ネタバレしないように気をつけて書くけど、
少しはネタバレしちゃうから、
これから観たい人は気をつけて!
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ヒロインは以前、
たくさんの男と交際してた、
って設定なんだよね。
いまは書店員やってて、
本のゲラを読んで推薦文を書いたりしてる。
(カリスマ書店員だから書いてる、
というわけではないのがミソ)
そのへん全国の書店員さんや、
援助交際を長く取材していた
友人のルポライター藤井良樹さんが観たら、
厳しい感想を言いそうだけど、
私はこの作品の
「夢みてない感じ」
「結論を出さない感じ」
が面白いと思った。
でも、だからこそ、爆発的人気は出なさそうな映画。
私は一人で古い小さな映画館で観て楽しかったけど、
休日に部屋でビール飲みながらDVD観て、
恋人と感想を言い合うと良さそうって感じでした。
もっと、
笑っちゃうくらい童貞高校生が
悶々とするシーンとかあると、
より好みだったなー。
ヒロインが脱ぐのに、
童貞高校生、一度も脱がないし。
太ってて裸に自信がなかったのか?
いや、監督の美意識なのかも。
童貞映画、あふれてるしね。
ヤリチンでワケありで、
これから売り出す商品に口を出せるほど
仕事ができるという設定の、
要潤演じる営業マンのキャラクターは秀逸。
シンプルな悪者ではないし、にくめない。
童貞高校生をなぜか好きになる、
けばい女子高校生、
存在感も言動もリアルだった。
童貞っぽさを赤裸々に伝える、
飲み物を注文するシーンが印象的……。
いじめシーンは古典的すぎ!
あれはギャグだったの?
童貞高校生の読んでる本を奪って、
いじめっ子たちがキャッチボールみたいに
本を投げ合うって……。
(でも悲惨すぎない、
冗談半分な感じがして逆にリアルでもあった。
いじめっ子も、実際いそうなキャラ。
キャスティングはほんと、すべて素晴らしかった)
あと、
ポツドールの元看板女優・安藤玉恵さんが出てる、
ファミレスのシーンは最高!
(私は結婚中、
一人で幼い子供二人を連れてファミレスに行き、
てんやわんやで周囲に迷惑をかける側だったけれど、
それでも痛快でした……)
そんな感じです。
全体的に、
自分の創作意欲が刺激される部分があって、
体調わるいのに観た甲斐がありました。
三軒茶屋の次は、
横浜で上映するそうです。
http://yaplog.jp/akane-y-dairy/archive/2073