2010年4月 6日

伏見憲明、七年ぶりの小説!/ついに本になったエッセイ漫画!

団地の女学生
あー面白かった!

表題作でない中編「爪を噛む女」は、
「すばる」掲載時に読んでました。

語り手は中年女性で、
学生時代に少し見下しつつも
一緒に音楽をやっていた幼なじみの女が、
(自分をさしおいて)ミュージシャンとして成功し、
最近落ちぶれつつあるという時点から
語り始められる物語で、
エンターテインメントとして楽しめるし、
嫉妬やら羨望やら、
悪意と善意の混ざり具合が絶妙で、
中村うさぎさんの帯文じゃないけど、
「……人間って……」
と考えさせられるところが文学的。
ドラマにしたら下世話にヒットしそうで、
そこが良いと思いました。

表題作「団地の女学生」は短編で、
短編のわりには視点があちこちするのが
最初はかなり違和感あったのですが、
いやー、
やられました。

ゲイの出会い系サイトについては、
私も面白いものだなあと感動して、
「歌よりも長く」
という連載でちょっと題材にしたんだけど、
やっぱりそのへん、
まだまだ年季が足りませんでした。
そりゃあ伏見さんが書かなくて、
だれが書くかって感じですけど。

ゲイの世界で、
ああいう男性が●●●●だったりする現象は、
ほんとに一般にはまったく知られてないと思う。
これ、知らない人からは
「嘘くさい」とか評されそうですが……。

そのゲイの視点を主に書くのではなく、
老婆の語り手を出してるところがいいなあ。

これも、
ドラマで観たい! 
でも映像より活字で味わったほうが
驚きがあるはずで、
その点が正しく小説だと思います。

伏見さんは知性と教養あふれる人だけれど、
小説に関してのコンプレックス(?)が全然ない系の書き手で、
その「文学なんてよく知らないよ……
でも手探りで書いてみた」みたいな態度(私の主観)が、
この小説集を独特のものにしていると思う。

多くの古典文学を学んでいる小谷野敦さんの小説が、
現代の中で異彩を放ってしまうというのも面白いけど。
私はつくづく、
おさまりのわるい部分のある小説しか
面白く感じないんだと思いました。

たくさん本を寄贈していただくのだが、
忙しい日々で最後まで読み通すのが難しい。
歌集は読むんだけど感想を書かないままだったりして。

そんな中、
面白くてつい読んでしまう、
という小説が少しでもあることが救いになります。
そういうものを、私も書きたいです。

こんな記事も発見。
http://allabout.co.jp/relationship/homosexual/closeup/CU20100405A/

伏見さんの本、けっこう昔から読んでるのですが、
じつは文藝賞受賞作は未読。
これから読むのが楽しみ……。
魔女の息子

なお、
以前「本になればいいのに」と
書いていたゲイ漫画の連載。
http://masuno.de/blog/2009/04/14/post-35.php

本になりました! 
買いましょう。
じりラブ

サイトでの連載は、
一日読み逃すと、
前日のをさかのぼって読むのが
妙に面倒なシステムになってる。
なので読み逃しも多かった。
今回まとめて読めて楽しかったです。
続きも出ますように。