表題作でない中編「爪を噛む女」は、
「すばる」掲載時に読んでました。
語り手は中年女性で、
学生時代に少し見下しつつも
一緒に音楽をやっていた幼なじみの女が、
(自分をさしおいて)ミュージシャンとして成功し、
最近落ちぶれつつあるという時点から
語り始められる物語で、
エンターテインメントとして楽しめるし、
嫉妬やら羨望やら、
悪意と善意の混ざり具合が絶妙で、
中村うさぎさんの帯文じゃないけど、
「……人間って……」
と考えさせられるところが文学的。
ドラマにしたら下世話にヒットしそうで、
そこが良いと思いました。
表題作「団地の女学生」は短編で、
短編のわりには視点があちこちするのが
最初はかなり違和感あったのですが、
いやー、
やられました。
ゲイの出会い系サイトについては、
私も面白いものだなあと感動して、
「歌よりも長く」
という連載でちょっと題材にしたんだけど、
やっぱりそのへん、
まだまだ年季が足りませんでした。
そりゃあ伏見さんが書かなくて、
だれが書くかって感じですけど。
ゲイの世界で、
ああいう男性が●●●●だったりする現象は、
ほんとに一般にはまったく知られてないと思う。
これ、知らない人からは
「嘘くさい」とか評されそうですが……。
そのゲイの視点を主に書くのではなく、
老婆の語り手を出してるところがいいなあ。
これも、
ドラマで観たい!
でも映像より活字で味わったほうが
驚きがあるはずで、
その点が正しく小説だと思います。
伏見さんは知性と教養あふれる人だけれど、
小説に関してのコンプレックス(?)が全然ない系の書き手で、
その「文学なんてよく知らないよ……
でも手探りで書いてみた」みたいな態度(私の主観)が、
この小説集を独特のものにしていると思う。
多くの古典文学を学んでいる小谷野敦さんの小説が、
現代の中で異彩を放ってしまうというのも面白いけど。
私はつくづく、
おさまりのわるい部分のある小説しか
面白く感じないんだと思いました。
たくさん本を寄贈していただくのだが、
忙しい日々で最後まで読み通すのが難しい。
歌集は読むんだけど感想を書かないままだったりして。
そんな中、
面白くてつい読んでしまう、
という小説が少しでもあることが救いになります。
そういうものを、私も書きたいです。
*
こんな記事も発見。
http://allabout.co.jp/relationship/homosexual/closeup/CU20100405A/
伏見さんの本、けっこう昔から読んでるのですが、
じつは文藝賞受賞作は未読。
これから読むのが楽しみ……。
*
なお、
以前「本になればいいのに」と
書いていたゲイ漫画の連載。
http://masuno.de/blog/2009/04/14/post-35.php
サイトでの連載は、
一日読み逃すと、
前日のをさかのぼって読むのが
妙に面倒なシステムになってる。
なので読み逃しも多かった。
今回まとめて読めて楽しかったです。
続きも出ますように。