2010年6月22日

短歌化とパクりと同案多数

こんなことがありました。
http://metos.co.jp/products/kamin/post-10.html

昔こんなこともありました。
http://masuno-tanka.cocolog-nifty.com/blog/2009/01/post-6a16.html

こんなことも。
http://masuno-tanka.cocolog-nifty.com/blog/2008/02/post_c21a.html

こんなことも以前書いた。
http://masuno-tanka.cocolog-nifty.com/blog/2006/11/post_5d96.html

松木秀くんの歌集『RERA』問題。
http://blog.rikkasyorin.com/article/37415740.html
http://www.sweetswan.com/kirin/k/

うーん……。

「短歌化」というのは、
枡野浩一が
『君の鳥は歌を歌える』(マガジンハウス/角川文庫)で
最初に試みたものだと、
はてなキーワードには書いてあります。
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%BB%B2%CE%B2%BD

この「事件」は、
村上きわみさんはもちろんのこと、
版元にとっても気の毒というか……。

結果、私の手元には今、二種類の『RERA』がある。
二冊とも贈っていただいたもの。
その手間とお金……、気が遠くなります。

RERA―歌集
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松木 秀
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松木くんも悪意がまったくないから、
そのつど「短歌化」作品を
元ネタの書き手(村上きわみさん)にも見せてたんだろう。

私と松木くんはツイッターで相互フォローしてるが、
私がなにか短歌を詠むと、
彼がそれに触発されたと思われる短歌を
すぐに詠む、
というようなことがよくある。

まあ、それはいい。

しかし、
だれかの「つぶやき」を
そのまま短歌化して、
その元のつぶやきを明記しない、
みたいなことを彼は時々やるのだ。

それは、まずい。

私も短歌化は時々やるけど、
必ず元ネタがわかるようにしてます。
また、【短歌化】と明記します。

私は彼に、
こんなふうに言ったこともある。
http://twitter.com/toiimasunomo/status/7454298189

野田くんのつぶやき
http://twitter.com/nodash/status/7452324597
をそのまま短歌にしたものを
松木くんが発表しているのを見たからです。
今調べたら消えていたけど。

どうして迂闊にも、
ここまで「そのまんま」の短歌化作品を、
歌集に収録しちゃうかなあ…………。

自分でも忘れていたのか?

ひとつ、
こういうことが発覚すると、
ほかにもあるんじゃないかと思って、
警戒してしまう。

『RERA』のあとがきには、
影響を受けた歌人として
枡野浩一の名前も出てくる。

影響受けるなら、
元ネタを明記するような態度も
真似て欲しかったなあ。

でも私だって、
自分の書く言葉に前例が一切ないなんて、
思えないです。
人が面白いと思う言葉なんて、皆、似ている。
結婚に関する格言を集めた本を出したことあるけど、
意味の似通った言葉ばかりだった。
だれが本当の作者かわからない「同案複数」もあった。

『RERA』は手に取るとすらすら読め、
どの歌もそこそこ気になる感じだが、
いざ、
いい歌を拾って紹介しようとすると、
どれを引用していいのかわからなくなる、
そういう歌集だった。

同工異曲も多く、
そのへんはあえてかもしれない。
同じ気分を繰り返し繰り返し歌っている。

一冊を通して読んで印象に残るのは、
だから、
歌集全体のトーンから少し外れた、こんな歌。

 る。みんな夜中の十二月にいて無音の雪の音がきこえる (松木秀)

 ひょっとしてこの俺様は死んだのかやたらと箸が長いんだけど (松木秀)

 ゆるやかな坂道をふとのぼり終えふり向いたならそれが夢です (松木秀)

全体的につまらなくはないのに、
どうにも感想を書きにくい歌集なのだった。

枡野浩一の歌の「本歌どり」もある。

 つり革の輪がデカければ首つりの綱になるのに夕焼け小焼け (枡野浩一)

 吊り革で首が吊れると気がついてつぎつぎ肩をのぼる赤ちゃん (松木秀)

んー。元歌を踏まえて、より面白くなってるかなあ……。
赤ちゃんの頭って普通、つり革の輪よりデカいよ?

この「本歌どり」の存在は私にも知らされていたが、
歌集に収録されるとは思ってませんでした。



なお、
私自身も「盗作」を疑われたことはある。
拙著『日本ゴロン』(毎日新聞社)をご参照ください。

最近も、
こんなことを言われた。
http://tenblo.seesaa.net/article/129070227.html

 塩酸をうすめたものが希塩酸ならば希望はうすめた望み (枡野浩一)

でも、
枡野浩一のこの一首は1991年発行の
手作り歌集『音信不通』にも収録済み。
その歌集は歌人の藤原龍一郎さん他が
保存しているそうです。
(実際に詠んだのはもっともっと前です。
中学か高校の頃にもう、
同じことを思いついて友達には話していた)

もっと遡れば落語のネタにも
似たようなのがあるそうだけど、
知りませんでした。
今ならネット検索で調べられるから、
発表する前に前例を知っていたら没にしたかもね。
この程度のネタは、同時多発的に同案がうまれる。
よくできた言葉のもじりほど、似てしまう。

私がこの歌を詠んだ頃は、
こういう題材をこういう料理の仕方で
短歌にすること自体が珍しかったはず。
もちろん前例は色々あった。
ただ、
こういう歌ばっかりを徹底して詠んでたのは
枡野浩一くらいだったと思います。
その徹底度に「オリジナリティ」があったのです。
あるフォーマットを提案した、というか。
今は似たことをする人が増えてしまったけどね。