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日本ゴロン
 

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写真=八二一 装幀=こじままさき (毎日新聞社/2002)

散文集。毎日新聞夕刊に連載していた『君のニャは、』という、日本語にまつわるコラムを中心にまとめた一冊です。本の真ん中に八二一撮りおろしの「猫写真集」が入ってるところがおトク! 売れてほしいニャー。


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■ 彼方への手紙 とっても素敵なお名前の柿子さんへ 

To:Kaki-co
From:mass-no@jd5.so-net.ne.jp
Subj:柿子さん、


とっても素敵なお名前でのメール、どうもありがとうございました。
(カキコさん、とお読みするのでいいんでしょうか。
もしも「コケラコさん」だったら、ごめんなさい。
そして、もしかしてご本名だったりしたら、もっとごめんなさい。
「とっても素敵なお名前」なんていう
痛烈な皮肉を言ってしまったこと、心よりおわびします)

   *

さて。
枡野さんは「カキコ」という言葉、なぜお嫌いなんですか?
……とのご質問ですが、
むしろ私のほうがご質問したいくらいです。
あなたは、なぜ、「書き込み」のことを「カキコ」と書くんですか?

   *

「カキコミ」とカタカナで書くくらいなら、まだわかります。
だけど、「カキコ」。
たった一文字を、なにゆえ、わざわざ略すのでしょう。
たしかに、
「スチャダラパー」を「スチャダラ」と略したり、
「ラブサイコデリコ」を「ブサイコ」と略したり、
日本人は略するのが好きですよね。
ラブサイコデリコのボーカルは、柳美里に少し似ていませんか?
そして「プレミアム」という五文字を
「プレミア」と四文字に略すことまであるのですから、
「カキコミ」を「カキコ」と略しても、
それはあなたの自由。想像の翼をはためかせ、
大空を駆けめぐればいいことだと思います。

   *

ですが柿子さん、
「カキコ」という略語は、
あなたが最初につかいはじめたのでしょうか?
万一そうだとしたら、ごめんなさいね。
でもきっと、あなた以外のだれかがつかっているのを、
なんとなく真似してみただけではないかと想像します。
このお茶目な言いまわしを最初につかった人は、
独創的な人だったんでしょう、きっと。
えっちな人だったかもしれませんね。
初めてカキコしちゃいます。
さあ、カキコ、カキコ!
ほら、なんだか、
思春期の甘酸っぱい匂いが漂ってくる言葉ですもの……。
できちゃった婚、
という言葉に、どことなく色が似ていますね。
サセコ、
という言葉にも似ています。一文字だけですが。
私も十五のころなら、
夜な夜な、うっかりカキコしちゃってたかもわかりません。

   *

不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心    (石川啄木)

   *

……歌人なので、つい短歌を引用してしまいましたが、
あんまり関係ない短歌でした。ごめんなさい。
それにしても、
いかなる理由で「カキコ」は、
ここまでインターネット界に普及したのでしょう。
私がインターネットをやるようになったのは、ほんの二年前ですが、
そのころにはもう、あちこちの掲示板で、
みんながみんな、いっせいに「カキコ」しちゃってました。
早い時期からインターネットに接していた人たちのあいだでの、
業界用語のようなものなんでしょうか。
インターネットでは「書き込み」のことを「カキコ」というのだ、
という慣習を知っている仲間たちの、内輪のにおいのする言葉。

   *

さっき、
なにげなく「掲示板」という言葉を書きましたけれど、
インターネットをまったくやっていない人に「掲示板」と言っても、
それがどういうものであるのか、
なかなか理解してもらえないと思うのです。
実物に接してみないことには。
私はそういう、
インターネットをまったくやっていない人の目……というものを、
インターネットをやっている最中でも忘れたくありません。
初めて枡野浩一のホームページに訪れた人が掲示板を見たとき、
「気軽に楽しくカキコしてくださいね!」
とか書いてあったら、どうでしょう。
どうでしょう。って言われても困りますか?
あなたは初めて「カキコ」という言葉を目にしたとき、
すんなり意味がわかりましたか?
私は、わかりませんでした。
「カキコ」という耳慣れない外国語を、
当たり前のように多くの人が連発しているのを目にして、
友達のできない転入生のように、疎外感をおぼえていました。
(小学生のころ、転校ばかりしていたせいかもしれません……)
そして、新しい土地の言葉には結局いまだに慣れることができず、
いつまでたっても気軽に楽しく「カキコ」できない私です。

   *

柿子さん、勝手なことばかり書きました。
柿子さんは柿子さんのまま、インターネットの大空のどこかで、
いつまでも「カキコ」していってください。
これは皮肉でもなんでもなく、心からそう思うんです。
私は私で、自分なりの「書き込み」を追求していきます。
どうか、お元気で。

   *

枡野浩一
http://talk.to/mass-no


(コメントは「短歌ヴァーサス」創刊号。一部修正。後半のエッセイは『日本ゴロン』より。)

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枡野浩一のメールアドレス
枡野浩一へ直接連絡する場合のメールアドレス(ii@masuno.de)
 
  増野ではなく升野でも舛野でも桝野でもない枡野なんです (枡野浩一)
  枡野浩一です。私の公式サイト『ますので』は、友人たちがつくった会社、階段社によって運営されています。枡野への連絡はまず、メール(ii@masuno.de)でお願いします。電話が少し苦手です。また、メールまたは郵送で送られてきた作品に感想を言うようなことは一切していません。何卒ご勘弁ください。どうぞよろしくお願いします。
 
image 『かなしーおもちゃ』以降の本の紹介ページが未完成ですみません。順次また……。
枡野書店とは?
枡野書店は実在します。たまに枡野書店謹製グッズも作っています。下の写真の枡野浩一が身につけているのは、短歌Tシャツや単行本発売記念マフラー(いずれも完売)。また思いついたら作ります。


 
枡野浩一の銀行口座
  この才能ある歌人に財産をあげたいという大金持ちの方は、ご自由にお振り込みください。

三菱東京UFJ銀行 
吉祥寺支店(220) 
普通 0121660 
マスノ コウイチ


枡野浩一へのアクセス
仕事の依頼等は、ii@masuno.deまでお願いします。枡野浩一に転送されます。お返事は出せませんが、ファンレターも有り難く拝読しています。「私の短歌を読んでください」というメールはご遠慮ください。
 
 
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