| 装幀=篠田直樹 絵・写真=朝倉世界一、内田かずひろ、オオキトモユキ、おかざき真里、小栗左多里、鴨居まさね、河井克夫、かわかみじゅんこ、業田良家、佐藤ゆうこ、しりあがり寿、辛酸なめ子、鈴木志保、高橋春男、魚喃キリコ、八二一、ばばかよ、町田ひらく、町野変丸、松尾スズキ、南Q太、やまだないと、リリー・フランキー (文庫/角川書店/2003)
これは『ますの。』の文庫化。文庫化にあたって、短歌をすべて4コマにしてみました。それ自体は新しいアイデアではないけれど、一冊の本にしちゃうところが図々しいでしょ?
装幀家の「スヌーピーみたいにしたい」との一言で、短歌を英訳したものを添えました。『ダーリンは外国人』のダーリンもほめてくださったらしい(奥様情報)翻訳は、インターネットで知り合った丹美継さんの手によるもの。私が英語できないので、友人の晄晏隆幸さんに通訳してもらいつつ作業しました。(→English page)
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■ 目撃について (文=枡野浩一)
自著を買う人を書店で目撃したら、その本はベストセラーになる。
という話を聞いたことがあるのだけれども、それが本当だとしたら私の本はみんなベストセラーになっているはずだから、それは嘘なのだと実感している。
私は目撃した。自著を手に持ってレジに向う人を。何度も。
思わず駆け寄って、
「ありがとう! その本書いたの僕なんです!! よろしかったらサインしますけど?」
と話しかけそうになるのをぐっとこらえて、彼や彼女の後ろ姿に心の中で深々とおじぎする。
話しかけそうになるのをぐっとこらえて……と書いてはみたものの、本当は一度だけ話しかけたことがある。気味悪がられて足早に立ち去られてしまった。あの女性は元気でいるだろうか。ちゃんと本は読んでくれただろうか。枡野浩一のことを嫌いになって、買った本をブックオフに売ったりしてないだろうか。
などと書店に行くたびに思いだすような男だから、妻に嫌われて離婚を希望されてしまったのかもしれない。だいたい書店にいる時間が長すぎるのだ。あれだけ長時間、詩歌コーナー周辺ばかりうろうろしてれば、自著を買う人も目撃するはずである。
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拙著『57577 Go city, go city, city!』(角川文庫)がようやく完成した。
短歌の作品集なのだけれど、まったく短歌集には見えない。むしろ4コマ漫画の本に見える一冊である。
短歌とは、日本語の音数が5・7・5・7・7のリズムになっている詩だ。そのリズムはなんだか4コマ漫画に似ているのではないかと前々から思っていた。それで、5・7・5・7・7の言葉が4コマ漫画になっている本があったらどうだろうかと思いつき、実際につくってしまったのが本書。思いつくところまでは私でなくてもできるだろうが、実際につくってしまう、それはなかなかできることではない。
「ありがとう! その本書いたの僕なんです!!」
と、書店で見知らぬ女性に話しかけることのできる私ならでは行動力だったとは言えまいか。
短歌を4コマ漫画にするために協力してくださった豪華ゲスト陣は、朝倉世界一、内田かずひろ、オオキトモユキ、おかざき真里、小栗左多里、鴨居まさね、河井克夫、かわかみじゅんこ、業田良家、佐藤ゆうこ、しりあがり寿、辛酸なめ子、鈴木志保、高橋春男、魚喃キリコ、八二一、ばばかよ、町田ひらく、町野変丸、松尾スズキ、南Q太、やまだないと、リリー・フランキー……23名全員が著者本人より人気者。自分がまるで、クジャクの羽を身体に挿した寓話のカラスになったような気がして落ちこむ夜もある。なるべく気にしないようにしている。
しかも、
「スヌーピーみたいな感じにしたいから」
というブックデザイナー篠田直樹の提案で、短歌を英訳したものまで添えることにした。そのため丹美継、晄晏隆幸という読めない名前の男性ふたりが、ここはIじゃないか、いやYOUのほうが……などと議論しつつ渾身の英訳を完成させてくださった。日本語だと一人称が省かれていても不自然ではないが、英語だとそういうわけにはいかないから、責任の所在をあらためて問いなおう必要があった。そもそも英訳をつけることにした理由が「スヌーピーみたいな感じにしたいから」だったとは、今さら言いだせないほど大仕事だったのである。
文庫本編集部の担当者氏が辛抱強くつきあってくださったことも有り難かった。なにしろ豪華ゲスト陣のうちのひとりが私の配偶者で、本書の制作中に夫婦関係がまずく行きはじめたため、そういう意味でも無駄にドラマのある本づくりの日々だった気がする。
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もちろん『57577 Go city, go city, city!』の発売日には、街へ出て、自著を確認しに書店に入った。文庫コーナーに平積みしてある本書をこっそり漫画コーナーに移動させるくらいのことでは、もはや良心がとがめたりはしないほど私はすでに闘いすぎてしまったらしい。
本書をレジに持っていく人を目撃するまで闘うつもりだ。
(コメントは「短歌ヴァーサス」創刊号。一部修正。後半のエッセイは「本の旅人」より。)

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