松江哲明監督の『あんにょん由美香』は、
まぬけなものばかりで構成されているのに、
結果としてかっこいいものに着地している、
奇跡のような映画だった。
林由美香を愛する男性たちの思い入れと、
林由美香本人の内実にはギャップがあったのだと、
関係者全員が自覚している。
その悲しさ。可笑しさ。
この映画を馬鹿にしそうな人の名前を、
いくつも思い浮かべながら観ていた。
登場人物は面識のある人も一部いたけれど、
松江監督の映画の中では全員が、なんて魅力的なんだろう。
中野貴雄監督などは何度も(遠目に)拝見しているが、
あんな素敵な人だったとは初めて知りました。
私の短歌を無断で女教師物Vシネ脚本につかったことのある(※)
いまおかしんじ監督の眼鏡はたぶん、
私と同じメーカーのものだよなとか、
どうでもいいところを気にしながら観ることが
大切な映画であると思った。
一緒に観た人と細部について語り合いたい。
でも一緒に観た人がこの映画をもしも嫌いだったら、
その人のことを嫌いになりそうで少し怖い。
生きることって、こうだよねと思った。
死ぬってことも、こうだよねと思った。
命と時間と思い出が主役の映画だった。
映画を撮ることについての映画だった。
林由美香さんとは一度だけ飲み会でご一緒した。
私は知人の死に自分でも驚くほど鈍感だ。
むしろ生きながら絶交してしまった人との
関係性のほうに気をとられて生きている。
なので冷淡な気持ちで試写室へ向かった。
眠いし別の日にしようかなと思っていた。
まさか最後あんなに泣いてしまって、
知り合いばかりの試写室から出るとき、
話しかけられても何も言えなくなるなんて。
いや、
泣くようなしかけは特別ないんですよ。
ほかの人が泣いていたかどうかは知らない。
随所で笑っている人はたくさんいた。
松江監督のことは好きだったが、
この映画を観て、大好きになった。
いい映画をありがとうございます。
あー、予告編を改めて観るだけで
自動的に涙が出てくる……。
*
「あんにょん由美香」は七月上旬、
ポレポレ東中野にてレイトショー公開予定。
http://www.spopro.net/annyong_yumika/
http://spopro.net/blog/annyong_yumika/


![由美香 コレクターズ・エディション [DVD]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51ESWFF5Q5L._SL160_.jpg)

