2009年6月 4日

『あんにょん由美香』試写

あんにょんキムチ

松江哲明監督の『あんにょん由美香』は、
まぬけなものばかりで構成されているのに、
結果としてかっこいいものに着地している、
奇跡のような映画だった。

女優 林由美香 (映画秘宝COLLECTION (35))

林由美香を愛する男性たちの思い入れと、
林由美香本人の内実にはギャップがあったのだと、
関係者全員が自覚している。
その悲しさ。可笑しさ。
この映画を馬鹿にしそうな人の名前を、
いくつも思い浮かべながら観ていた。

登場人物は面識のある人も一部いたけれど、
松江監督の映画の中では全員が、なんて魅力的なんだろう。
中野貴雄監督などは何度も(遠目に)拝見しているが、
あんな素敵な人だったとは初めて知りました。

私の短歌を無断で女教師物Vシネ脚本につかったことのある(※)
いまおかしんじ監督の眼鏡はたぶん、
私と同じメーカーのものだよなとか、
どうでもいいところを気にしながら観ることが
大切な映画であると思った。
一緒に観た人と細部について語り合いたい。
でも一緒に観た人がこの映画をもしも嫌いだったら、
その人のことを嫌いになりそうで少し怖い。

生きることって、こうだよねと思った。
死ぬってことも、こうだよねと思った。
命と時間と思い出が主役の映画だった。
映画を撮ることについての映画だった。

由美香 コレクターズ・エディション [DVD]

林由美香さんとは一度だけ飲み会でご一緒した。
私は知人の死に自分でも驚くほど鈍感だ。
むしろ生きながら絶交してしまった人との
関係性のほうに気をとられて生きている。
なので冷淡な気持ちで試写室へ向かった。
眠いし別の日にしようかなと思っていた。

まさか最後あんなに泣いてしまって、
知り合いばかりの試写室から出るとき、
話しかけられても何も言えなくなるなんて。

いや、
泣くようなしかけは特別ないんですよ。
ほかの人が泣いていたかどうかは知らない。
随所で笑っている人はたくさんいた。

松江監督のことは好きだったが、
この映画を観て、大好きになった。

いい映画をありがとうございます。

あー、予告編を改めて観るだけで
自動的に涙が出てくる……。

「あんにょん由美香」は七月上旬、
ポレポレ東中野にてレイトショー公開予定。
http://www.spopro.net/annyong_yumika/
http://spopro.net/blog/annyong_yumika/


※印の詳細は、以下の拙著に。
あるきかたがただしくない